手仕事に込められた想いにふれる

「布 うつくしき日本の手仕事」展

横浜駅の行政サービスコーナーで「布」と書かれた藍色のフライヤーを見つけたのは、まだ夏になる前だったような気がします。手に取ると「布 うつくしき日本の手仕事」とのタイトルで、横浜市歴史博物館の企画展でした。夏休み期間の7月17日〜9月20日の開催はまだ先だけど、絶対に観に行きたいと思って1枚頂いてきました。
やっと訪れたのは夏休みが明けた9月初旬、幸いなことに他に来場者はお1人のみという貸し切りに近い状況で、じっくり観ることができました。

Kayo

今回のブログは手仕事好きのワタシが好きなモノについて長々と書いております。
お付き合いいただけたら嬉しいです ^-^
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膨大な時間が込められている圧倒的な手仕事。特に冬の長い東北以北の生活用品に見られる手仕事は、少ない資源を大切に使い続ける人々の知恵と、暮らしを少しでも快適にしたいという切なる想い、祈りすら込められていると感じます。今回の「布 うつくしき日本の手仕事」展は「こぎん」に代表される木綿糸を刺して文様を表現した着物や、藍の型染め、裂き織り、草木の繊維を績んだ糸や織られた布などが、詳細な解説を添えて展示されています。「布」が暮らしの中で活きていたときに想いを巡らせながら、時間をかけた細やかで美しい手仕事に魅了されたひとときでした。

精巧で美しい文様「こぎん」

こぎんにも種類があることを初めて知りました。
青森県津軽地方の「こぎん」はデザインの特徴から「西こぎん」「東こぎん」「三縞こぎん」に分類されています。
「西こぎん」は西目屋村周辺に分布していて、模様の特徴は肩に藍と白の糸で交互に刺した縞、背に魔除けの模様である「さかさこぶ」が施されています。「東こぎん」は弘前城の周辺に分布、布が太めの麻糸で織られて、全体に同じ模様を刺していることや、縞が無いことが特徴です。現存数の少ない「三縞こぎん」は主に五所川原市で収集され、名前の通り肩から胸にかけて三本の太い縞柄がデザインされています。
注*出典「そらとぶこぎん 第4号」

写真は「全体に同じ模様」が刺してある「東こぎん」です。藍色が長年使われてきて褪色していますが、優しい色合いと少し太めの糸で刺繍した模様がとっても素敵!すぐにでもデニムでジャガード織りの柄にしたいくらい今でも通用するようなデザインです。

特筆すべきは裏側の見え方にもあります。写真では左端に少しだけ見えていますが、リバーシブルにできるくらいの裏側なんです。当然ネガポジ逆転しますから、薄い藍色「浅葱色」がメインの見え方。こちらはメンズのシャツにしたいですね。

こぎんの部分が浅葱色に褪色しているのに、衿や袖は濃い色の絣が縫い付けられています。デザインしたようで素敵なのですが、これはお洒落している訳ではありません(お洒落ゴゴロもあったかもしれないけど ^-^ )。膨大な労力をかけて作られたこぎんは衿や袖などの生地が傷んできたら、新しい着物に再生して使い続けられてきた証です。

新鮮!カラフルな「菱刺(ひしざし)」

色彩検定を受けると必ず暗記する言葉に「四十八茶百鼠」があります。奢侈禁止令で贅沢を禁じた江戸時代、庶民は許された色の茶、鼠、藍を工夫してお洒落を楽しみました。そして生まれたのが様々な茶色、鼠といわれるグレー、藍色です。なぜグレーを灰色と言わず、鼠としたか?これも色彩検定で勉強しますね!江戸の町は何度も大きな火事に見舞われたので「灰」は忌み嫌われ、色名では「鼠」が用いられたのです。

少し話がそれました。菱刺の前掛けは展示の中で一番カラフルなものです。時代はわかりませんが、奢侈禁止令のことから明治以降のものかなと推測しています(ご存知の方お教えください)。藍の地色に、少ない面積の紅色と橙色が、白と紺の刺繍で鮮やかに見えるように配色されています。可愛い色糸をどんな思いで前掛けに刺繍していたのかしら、お母さんが娘に?お嫁入り用に?想像が膨らみます。

「裂織(さきおり)」は究極のSDGs?

裂織のこたつ布団、ふっくら温かそうに見えますが経糸は夏のイメージの麻繊維です。
緯糸に使われているのは古くなって着られなくなった着物地。古くなった着物を解(ほぐ)して長方形の布に戻してから、細く切った裂布を作って緯糸にしていきました。
日本の和服生地は着尺といわれる反物の場合、昔は9寸5分=36cm幅でした(今では幅が大きくなって種類も増えています)。気の遠くなるような作業ですが、糸で作る生地よりも厚みがあって丈夫で保温性も高い布ができます。こたつ布団には最適な布になったのでしょうね。

裂織は着物を解して裂布を作る時間はかかりますが、そもそも元の生地を作るのにも大変な手間がかかっています。
糸を作る「紡績」は「紡ぐ(つむぐ)」と「績む(うむ)」という言葉からできています。ウールやコットンは細い繊維を紡いで糸にします。それに対して草木繊維の麻などは蒸したり干したりしてから繊維を取り出して、更に一本一本を績んで(結ぶ)長い一本の糸にしなくてはなりません。糸にするまで時間と手間がかかるのです。
木綿が生産できる北限は会津地方だった頃、津軽地方での主たる繊維は麻や樹皮などでした。そんな手間をかけて作った布ですから、ボロボロになるまで使い倒すんですね。布から新たな布を作り、その布が古びたら掃除などに使い、煮炊きの燃料になり、灰は肥料になります。

究極のSDGsともいえる裂織。「つくる責任つかう責任」SDGs12は遥か昔からの生活で実践されてきたことなんですね。

最新リカバリーウエアに採用される「紙布」の技術

和紙が丈夫なことはイメージできる方も多いでしょう。楮繊維から紙漉する「舟水」にするまでには、蒸して皮を剥ぐことに始まり、繊維を煮て解して川にさらして…やはり膨大な手間と時間がかかります。当然のように、布と同じように大切に使い切ります。

紙糸の材料は古くなった大福帳などの今では古文書といわれるもの。細く切って撚りをかけて糸ができます。

写真のメッシュ肌着、登山する方にはイメージしやすいですね、汗を素早く乾燥させてくれる機能性アイテムです。正確な亀甲文様がとても美しくて目を奪われました。卓越した手仕事がうかがえます。

ゴールドウィン社のリカバリーウエア「Re-Pose」では、紙糸繊維を30~47%混紡した製品がリリースされました。日本古来の紙布が最新のテクノロジーウエアに進化した紙糸繊維は肌離れが良くドライ感が続くので快適だそうです。プレスリリースには地球環境にも配慮した天然素材と記載されていました。

日々の暮らしを丁寧に、理想です

毎日毎日があっという間に過ぎていく今日この頃、暮らしの全てを丁寧にとはとても無理。でも、お味噌汁だけはお出汁をとって作るとか、洗面台は毎日きれい掃除するとか、小さなことでも何かしら丁寧にしていると暮らしが心地良くなるなぁ、って思っています。2年前には当たり前だった日常が失われている今だからこそ、日々の暮らしを丁寧にしていきたいです。

霧のような雨。この日はせっかくの美容院帰りなのに髪がぁぁぁ… >_<
今日のコーディネートはトップスに(カーディガンで隠れちゃったけれど)パーソナルカラー:サマーのローズブラウン。シルバーのブローチでブラウンをブルーベースに寄せています。今年の秋、ワタシにはこのローズブラウン系が良い感じです♡

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